タックスファイルナンバーの重要性と詐欺対策|オーストラリア生活
- 伊藤 義文

- Oct 29
- 4 min read
Updated: Dec 18

オーストラリアで生活や仕事を始める際に、まず必要になる重要な手続きが「タックスファイルナンバー(TFN)」の取得です。 TFNはオーストラリア国税局(ATO)が個人に付与する納税者番号で、給与や税金、年金(スーパーアニュエーション)などに使う、非常に大切な個人識別番号です。 銀行口座開設や就職手続きにも必要となるため、オーストラリアで生活する全ての人が取得すべき番号といえます。
今回は、このTFNがなぜ重要なのか、また、近年多発しているTFNに関わる詐欺について解説します。
タックスファイルナンバーの管理がなぜ重要?
TFNは、税務処理上での本人確認に非常に強い権限を持っています。 そのため、情報が漏洩して悪用されると、経済的な被害につながる恐れがあります。
TFNを安全に使用するポイントとしては、
手帳やスマートフォンなどのメモに残さない
メールやSNSで安易に送らない
必要書類は安全な場所に保管
不要になった書類はシュレッダーで破棄
オンラインで入力する際は正規サイトか必ず確認
また、オーストラリアでは税務関連書類の保存期間が定められていますので、 必要な書類は保管する必要があるので、長期保管の際は上記にご注意いただく必要があります。
タックスファイルナンバーは限られた機関のみで利用できる
TFNの提示を求めることができるのは法律で認められた機関に限られています。
オーストラリア国税局(ATO)
雇用主
銀行・金融機関
人的サービス省(Department of Human Services)
スーパーアニュエーション基金
また、これらの機関は、法律に基づいた目的以外でTFNを利用、保存することはできません。 逆に、以下のような場面でTFNが必要と言われたら個人情報保護の点から要注意です。
ATOから偽造されたメール、テキスト・メッセージ(または電話)
不動産の賃貸契約
身分証明目的
車の購入手続き など
「本当に必要?」と思うことがありましたら、ATOや登録税理士へ確認するのが安心です。
タックスファイルナンバーを提出しないとどうなる?
実際には必要な場面でも提出しなくても違法とはなりません。ただし、提出しないと以下のようなデメリットがあります。
給与から47%の税率で源泉徴収される
銀行口座の利子に47%の税率が適用される
政府給付(Centrelinkなど)の手続きが遅れる可能性
スーパアニュエーション(退職年金)での問題点
個人Tax Return申告が非常に不便になる
個人事業主としてのAustralian Business Number (ABN)登録で税務局より追加確認が入る
提出する書類にTFN欄がある場合でも安全を守りつつ手続きしましょう。
情報が漏れたかも?と思ったら
TFNが不正に扱われた疑いがある場合は、
まず相手機関へ苦情を申し立て
ATOへ早急に連絡 (https://www.ato.gov.au/online-services/scams-cyber-safety-and-identity-protection/verify-or-report-a-scam)
紛失・盗難時は特に迅速にATOへ相談を!
不安を放置せず、早急の対策をおススメします。
確定申告シーズンは詐欺が急増!
税務申告(Tax Return)の時期には、TFNを狙ったフィッシング詐欺が多発します。
よくある詐欺手口
「新しい通知があります」など不安を煽るメール
偽物のmyGovログイン画面への誘導
ID/パスワード/SMS認証コードを聞かれている通知
運転免許証番号やクレジットカード情報も同時に要求
本物そっくりで、非常に巧妙なサイトとメールが多数存在しています。特にmyGovへのログインを要求される場合は、必ず正規のウェブサイト(https://my.gov.au 以外へのリンク) を確認してから、情報を入力の上、二段階認証のご利用を心がけることが大切です。

安全対策
ATOやServices Australiaは、政府部署として以下の点を明確に断言しています。
メールやSMSにリンクを載せて送信されることはない
個人情報をメールやSMSで求めることはない
通知は必ずmyGov内に届く
不意に届いたメッセージは無視の上、必ず公式サイトに直接アクセスを確認しましょう。また税務局は流行しているネット詐欺の情報を公開していますので、そちらのご確認もおススメします(https://www.ato.gov.au/online-services/scams-cyber-safety-and-identity-protection/scam-alerts)。
TFNはオーストラリアでの生活や仕事に欠かせない一方、最も重要な個人情報のひとつです。 日常的な情報管理と詐欺対策を徹底することで、将来の信用や財産をしっかり守ることができます。
(更新: 2025年12月10日)
Disclaimer:
本資料は、更新日までの一般的な情報提供を目的とするもので、税務的なアドバイスで はありません。個別の状況に関しては、専門の会計士・登録税理士にご相談ください。

伊藤 義文(Ito Yoshifumi)
豪州公認会計士・登録税理士/Kuyama Ito & Co Pty Ltd
東京生まれ、育ちはオーストラリア・メルボルン。
日英バイリンガル会計・税理士として、個人事業主から中小企業までの税務申告、経理業務代行、各種財務書類の作成、ビジネスコンプライアンス業務、経営者へのコンサルティング業務が専門。 20年以上の知識と経験を活かして、クライアントの個別ニーズに応えながら、ビジネスの成長と発展をサポート。最近では、CPA PROGRAM(豪州公認会計士)における「税務」分野の資格試験問題の作成にも従事。現在は、KUYAMA ITO & CO PTY LTD (久山・伊藤会計事務所)の所長。


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