FBT(Fringe Benefits Tax)税について知っておくべきこと
- 伊藤 義文

- 2月18日
- 読了時間: 5分
更新日:4月8日
FBT(フリンジベネフィット税)の基本
Fringe Benefits Tax(FBT)は、オーストラリアで雇用主が従業員に給与以外の金銭的価値のある利益を提供した際に課される税金です。これには社用車、住宅、ジム会員権などが含まれます。雇用主は、これらの利益に対して高い税率を支払う必要があります。
先日、オーストラリアで駐在員として滞在しているクライアントから連絡がありました。「大変です。スピード違反が来たのですが、すごく高額なのです!」と彼は言いました。通常、10km以内のスピード違反は約$250の罰金ですが、彼のケースは異なりました。
スピード違反の実例
メルボルンがあるビクトリア州では、会社名義の車両がカメラで検知された場合、会社宛に3,000ドルを超える罰金が科されることがあります。これは、運転者を特定し、会社がその運転者を申告することを義務づけるための仕組みです。運転者が特定されれば、その運転者が罰金とデメリットポイントの責任を負います。しかし、運転者が特定されない場合、会社に重い罰金が課されます。
今回は、実際に対応した日系企業の駐在員のケースをもとに、どのように対応すべきか、さらにFBTとの関係について解説します。
日系企業の駐在員のケーススタディ
日系企業のオーストラリア現地法人が、日本からの駐在員に会社名義の車両を支給しました。
スピードカメラにより、10km/h以内の速度超過違反が検知されました。
結果として、会社宛に3,000ドルを超える交通違反通知が発行されました。
実際の運転者は駐在員本人でした。
会社側は「この罰金を会社経費として処理できるのか?」と悩んでいました。
運転者の指名(Nomination)の重要性
このケースでは、違反通知がNotice of Final Demandに進む前の段階だったため、オンラインで迅速に実際の運転者(駐在員本人)を指名しました。その後、指名は無事に受理され、以下の結果となりました。
会社宛に発行されていた高額な罰金は取り消されました。
駐在員個人宛に、通常額の罰金が新たに発行されました。
デメリットポイントは、運転していた本人に振り分けられました。
運転者が特定できない場合のリスク
会社が違反当時の運転者を把握できない、または運転者の指名を行わない場合、大きなリスクが伴います。ビクトリア州では、12ヶ月以内に3回以上運転者の指名を行わなかった場合、会社に22,000ドルを超える罰金が科される可能性があります。これは、罰金を支払っているかどうかに関係なく適用される点に注意が必要です。
車両管理ポリシーの必要性
今回のケースを通じて、1台の社用車を複数の駐在員で共有している場合には、車両管理体制のポリシー導入が不可欠であると感じました。具体的には、以下のような対策が考えられます。
社用車の利用ルールの明確化
利用記録(ログ)の作成・保存
交通違反罰金とFBTの関係
会社名義の車両で交通違反の罰金を会社が支払う場合、税務上はFBTの対象経費となります。これは、交通違反の罰金が業務中であっても「個人責任」とみなされるためです。そのため、会社が罰金を負担することにより、社員への経済的利益とみなされ、FBTの対象経費になるリスクが高まります。
実際のFBT納税額について、罰金額が「$3,000の場合」と「$250の場合」で説明します。
ケース①:罰金3,000ドルを会社が支払った場合のFBT額
計算式:$3,000 × 1.8868 × 47% = $2,660.39
結果:罰金$3,000 + FBT額$2,660.39 = 会社の実質負担額 $5,660.39
名目上は$3,000の罰金でも、実際の会社コストは約$5,660となります。
ケース②:罰金$250を会社が支払った場合のFBT額
計算式:$250 × 1.8868 × 47% = $221.70
結果:罰金$250 + FBT額$221.70 = 会社の実質コスト $471.70
少額の罰金でも、FBTが加算されることで実質コストは大きく増える点に注意が必要です。$300以下の罰金で、かつ一度きり・例外的なケースであれば、Minor Benefits Exemption(マイナー・ベネフィット免除)が検討できる余地もあります。この場合、条件を満たせばFBT課税を回避できる可能性もあります。
まとめ
会社名義の車両で高額な交通違反通知を受けた場合、運転手を指名することで罰金が約10分の1に減額される可能性があります。
交通違反の罰金を会社が支払うと、高額なFBTが発生します。
結果として、罰金が高額になるほど、会社の実質負担も急増します。
「これって会社負担?個人負担?」や「FBTに影響する?」と迷った場合は、専門家へ相談することを強くおすすめします。会計士として25年以上の経験がありますが、未だに初めて聞くケースがあることに驚かされます。
(更新: 2026年2月5日)
Disclaimer:
本資料は、更新日までの一般的な情報提供を目的としたもので、税務アドバイスではありません。個別の状況については、必ず専門の会計士または登録税理士にご相談ください。

伊藤 義文(Ito Yoshifumi)
豪州公認会計士・登録税理士/Kuyama Ito & Co Pty Ltd
東京生まれ、育ちはオーストラリア・メルボルン。
日英バイリンガル会計・税理士として、個人事業主から中小企業までの税務申告、経理業務代行、各種財務書類の作成、ビジネスコンプライアンス業務、経営者へのコンサルティング業務が専門。20年以上の知識と経験を活かして、クライアントの個別ニーズに応えながら、ビジネスの成長と発展をサポートしています。最近では、CPA PROGRAM(豪州公認会計士)における「税務」分野の資格試験問題の作成にも従事。現在は、KUYAMA ITO & CO PTY LTD(久山・伊藤会計事務所)の所長です。

