オーストラリアの給与ルールの基本
- 楠本 岳

- 3月25日
- 読了時間: 5分

オーストラリアのAward(アワード)とは?対象かどうかの判断方法まで分かりやすく解説します。
給料はAwardで決まる
オーストラリアで人を雇う際、多くの日本企業が最初に戸惑うのが給与の決め方です。日本では企業ごとに給与を設定するのが一般的ですが、オーストラリアではその前提が異なります。
その背景にあるのが「Award(アワード)」という制度です。
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Awardは「最低労働条件」を定めたルール
Awardとは、業界ごとに定められた最低労働条件のことを指します。最低賃金だけでなく、残業代や休日手当、勤務時間なども含まれており、「これ以下で雇用してはいけない」という基準があらかじめ決められています。
この制度は労働者の権利を守るために設けられており、「Fair Work Commission」によって管理されています。そのため企業は、意図せずであってもAwardを下回る条件で雇用することはできません。
業界ごとにルールが異なる
オーストラリアには100以上のAwardが存在し、それぞれ適用される業界や職種が異なります。例えば、事務職であればClerks Award、飲食業であればHospitality Awardといったように、仕事内容に応じて適用されるルールが変わります。
給与はAwardの「Level」によって決まる
Awardの特徴の一つが、職務レベル(Level)によって給与が決まる仕組みです。簡単な業務から、経験を要する業務、リーダー的な役割まで段階的に分かれており、レベルが上がるにつれて最低給与も上がっていきます。
例えば、Clerks Awardでは以下のように、職務レベルが分かれています。
Level | 仕事内容 |
Level 1 | 簡単な事務 |
Level 2 | 一般事務 |
Level 3 | 経験のある事務 |
Level 4 | チームリーダー |
Level 5 | 管理職補佐 |
このように、オーストラリアでは企業が自由に給与を設定するのではなく、あらかじめ決められた枠組みの中で雇用条件を設計していく必要があります。
例えば、Clerks Awardの場合
Levelが上がるほど、最低給与も上がります。
給与はAward、Levelごとに枠組みが決められていることが分かりましたが、
実際にどう設定していくかを説明します。
※Clerk Award とは一般的に事務職が該当します。
Fair Workによると以下の内容や職種が該当します。
administrative assistants
receptionists (eg. in a tax accounting firm)
bookkeepers (eg. in a manufacturing company) 他
詳しくはこちら:Clerk Awards
Award対象かどうかの判断方法
判断は「会社」ではなく「仕事内容」で決まる
実務で多くの企業が悩むのが、「この従業員はAward対象なのか」という点です。
この判断において最も重要なのは、会社の業界ではなく、その人が実際に行っている仕事内容です。例えばIT企業であっても、事務や経理、カスタマーサポートなどの職種であれば、Clerks Awardが適用される可能性があります。
3つの判断基準
Awardの対象かどうかは、主に次の3つの観点から判断されます。
仕事内容がAwardの適用範囲(Coverage)に含まれているか
管理職(マネージャー)に該当するか
給与水準がどの程度か
まず最初に確認すべきは、仕事内容が各AwardのCoverageに含まれているかどうかです。これが最も重要な判断軸になります。
次に、その従業員が実質的な管理職かどうかが見られます。
単なる役職名ではなく、一般的に以下の条件を満たす場合、Award対象外になることがあります。
部下の管理
人事権
予算管理
経営判断への関与
給与水準も一つの参考にはなりますが、これだけで判断されることはありません。あくまで仕事内容との組み合わせで判断されます。
同じ会社でも適用は分かれる
実際の現場では、同じ企業の中でもAwardの適用が分かれることは珍しくありません。
例えば、事務職はAward対象になる一方で、シニアマネージャーは対象外となる、といったケースはよく見られます。そのため、「会社単位」で考えるのではなく、「職種単位」で判断する視点が重要になります。
実際に同じ企業であっても、このようなケースが多くあります。
ケース①:事務職→ Clerks Award対象
ケース②:営業職→ Sales Award対象の場合あり
ケース③:シニアマネージャー→ Award対象外の可能性
日系企業でよくある誤解と注意点
年収が高い=対象外ではない
よくある誤解の一つが、「年収が高ければAward対象外になる」という考え方です。しかし実際には、仕事内容がAwardの範囲に含まれていれば、高年収であっても対象になる可能性があります。
Award適用は企業の判断だけでは決まらない
もう一つの重要なポイントは、Awardの適用が企業の裁量だけで決められるものではないという点です。Fair Workの基準に基づいて客観的に判断されるため、誤った判断は法令違反につながるリスクがあります。
判断に迷った場合の対応
実務上、判断に迷うケースも少なくありません。その場合には、Fair Workが提供しているPACTツールを活用することで、該当するAwardを確認することが可能です。
まとめ
Awardは、オーストラリアの雇用制度における基盤となるルールです。業界ごとに最低労働条件が定められており、その枠組みの中で給与や勤務条件が決まります。
そして、その適用対象かどうかを判断するうえで最も重要なのは「仕事内容」です。管理職かどうかや給与水準も考慮されますが、あくまで補助的な要素に過ぎません。
このポイントを押さえることで、オーストラリアの給与制度はより実務的に理解しやすくなります。

楠本 岳(Kusumoto Takeshi)
人材コンサルタント/CAREER MEISTER
2007年にオーストラリアの人材紹介会社に転職し、メルボルンへ移住。
人材営業、メルボルン支店長、会社取締役を経て2014年末に独立の為に退職。2015年2月にCAREER MEISTERを創業。 日系企業のオーストラリアビジネス参入や事業発展を人材面から支えるプロフェッショナルとして、これまでに100社を超える企業への紹介実績と5000人以上の面談実績、500人を超える成約実績。現在は CAREER MEISTER (Kusumoto & Co Pty Ltd) のCEOを務める。


