日本と違う?オーストラリア人がよく引越す理由
- 武尾 和彦

- 2月4日
- 読了時間: 5分
更新日:2月24日

オーストラリアに長年住んでみて、「なぜオーストラリア人はそんなに引越すのか?」と感じたことが多くありました。
日本での引越しはとても大きな決断で、一度住んだら長く住むので人生で数回の引越し回数が一般的です。私もオーストラリアに移住する前は、日本の実家に25年間住んでいました。
一方、オーストラリア人は環境の変化に合わせて驚くほど頻繁に住む家を変えます。
それでは、なぜオーストラリア人はそんなに引越すのでしょうか?
数字で見る「移動大国」オーストラリア
データを見てみますと、生涯の引越し回数は、日本は3〜5回、オーストラリアは10〜15回以上という結果です。それではなぜ、オーストラリア人はこれほどまでにフットワークが軽いのでしょうか?その裏側を覗いてみましょう。
オーストラリア人のこの引越し回数の理由は、転職による移動、子供の成長に合わせた学区移動、リタイア後のダウンサイズによることが一般的で、長く定住することよりも、その時の環境への適応を重視していることがよく分かります。
転職・キャリアアップで引越すオーストラリア人
オーストラリアでは、より良い条件(給与・役職)を求めて動くことが評価される傾向にあるので、転職についてはキャリアのステップアップ、大幅な収入アップのためなら他州の企業に普通に転職しますので、フットワークがとても軽く流動性が高いと言えます。
子供の学区に合わせて住まいを変える
子供の公立校の学区への移動に関しては、日本のような「越境通学」がほぼ認められないため、人気校は「あの学校に入れたいなら、そのエリアに住むしかない」「住まないと入れない」というシンプルな行動原理が働きます。
リタイア後のダウンサイズで賢く資産活用
リタイア後のダウンサイズは、オーストラリア人のライフサイクルにおいて一般的で、かつ賢明な老後の選択としてポジティブに捉えられています。
子育てを終えた大きな一軒家を高く売り、より安価で小さな物件(アパートメントやタウンハウス)に住み替えることで、売却益の差額を老後資金に回します。その含み益を老後の楽しみ(旅行や趣味)や医療費の備えとして引き出す感覚です。
また、芝刈りや掃除に時間を取られたくないと考え、管理が簡易なLock up and leave(鍵をかけてすぐ旅行に行けるような身軽さ)のライフスタイルに移行します。
実際にゴールドコーストの私のクライアントのなかでも、このような理由から長年慣れ親しんだ一軒家を売却して、アパートメントやタウンハウスに移り住み、新生活を始めるリタイヤされた方々が多くいらっしゃいます。
賃貸の仕組みの違い:なぜオーストラリア人は「身軽」に動けるのか
不動産賃貸についての制度を比較しますと、日本は敷金、礼金、仲介手数料、更新料、保証人制度、初期費用の高さが動かない理由の一つとなりますが、オーストラリアでは基本はボンド(保証金)のみです。入居審査もオンラインで完結するので、動くことへのハードルがとても低くなっています。
また、オーストラリアのシェア文化は古くから一般的で社会に深く定着したライフスタイルです。入居者募集のプラットフォームが充実しており、賃貸契約も比較的フレキシブルですので、近年は生活費高騰により若者や学生だけではなく、全世代に広がってきています。
不動産価値の決定的な違い
日本では新築が最高値で消費財としての家ですが、オーストラリアでは家はプロパティ・ラダー(不動産の梯子)という概念で、家は一度買って終わりではなく、登っていくための梯子で、最初は小さなアパートを買い、数年住んで価値が上がったら売り、その利益を頭金にして一軒家へ……と、わらしべ長者のように家をグレードアップしていく文化です。
オーストラリア人にとって家は資産と見る傾向があり、引越しはステップアップ(資産を増やす行為)である側面もあり、日本と比較して動きが活発な傾向にあります。
また、市民権、永住者保持者は、自宅を売却した時の利益に対しては、基本的に税金(キャピタルゲイン税)がかかりませんので、利益がそのまま手元に残り、次の家の購入資金に回せるため、売買のサイクルが早くなります。
このような、オーストラリア人の人生のステージに応じて動く習慣や文化は、フレキシブルなオージースタイルのひとつだと思います。仕事や家族構成に合わせて家を自分に合わせるスタイルなので引越しの回数が多くなりますが、環境を変えることはポジティブなリセットという意味合いが強いです。
都市部の慢性的な住宅不足を背景に、都市部の家賃高騰やリモートワークの定着により地方移住が進行している近年、オーストラリア人のこの高い引越し頻度は、今後も続く、あるいはさらに加速すると予想されます。
オーストラリア人にとって、家は一生を共にする終の棲家ではなく、その時々の人生を最大限に楽しむためのステージです。子供の成長、キャリアの転換、そしてリタイア後の自由などの変化を恐れるのではなく、変化に合わせて住まいを脱ぎ捨てていく。そんなオージーの軽やかなフットワークは、私たちに『もっともっと思い切った自由な生き方があってもいいんだな〜』と思わせてくれる気がします。

武尾 和彦(Takeo Kazuhiko)
不動産エージェント/Keihin living
神奈川県茅ヶ崎市出身、ゴールドコースト在住30年。2015年にオーストラリアの不動産ライセンスを取得後、KEIHIN LIVING代表としてローカルの不動産エージェントと提携して日系のクライアントを中心に新築物件購入の仲介、中古物件の売却、賃貸管理業、バイヤーズエージェントなど多数の案件に従事。業務を通じた日々の実体験をもとに、オーストラリアの不動産について現地のリアルな最新情報をお届けします。


